2024年6月18日、藤枝市立西益津中学校にて、「藤枝の観光を盛り上げよう」というテーマで総合的な学習の時間の導入(オリエンテーション)をさせていただきました。今後11月までかけて生徒たちに藤枝の観光を盛り上げ、多くの人たちに来てもらうようにするためにどのようなアクションをしていけばいいのかを考えていきます。
今回の実習先
学校名:藤枝市立西益津中学校3年
実習のテーマ
- FGP藤枝元気プロジェクトに参加しよう
~藤枝の観光を盛り上げる手段について考える~
実習の流れ
(6月)藤枝の観光について知る
- 講師の方をお招きしての藤枝の観光資源になるものについてお話を聞く。
- 藤枝市の観光資源に関して強みや弱みについて考える。
(7月)課題設定、情報収集、情報の整理
- 個人のテーマを決める。
- 自分が注目したコンテンツについてまとめる。
(9月~10月)個人でまとめたものの発表、クラスでの検討
- 個人でまとめたものを発表し、友達と共有する。
- アイデアをまとめる。そのアイデアをもとに情報収集する。
- イベントについて協力して考え、実施までの計画を作る。
(11月)イベント準備、イベントの実施、まとめ
- 各クラスでイベントに向けた準備を行う。
- イベントを実施した後のまとめを行い、発表をする。
今回の実習
オリエンテーション
~FGP藤枝元気プロジェクトに参加しよう~
授業の流れ
1 単元の流れの説明
2 学習の進め方
3 藤枝市の観光コンテンツについて考える
活動内容
今回はオリエンテーションということで、鈴木がパワーポイントを使い、授業内容についての説明をする中で、生徒たちに色々と投げかけを行っていきました。
1 なぜ「観光」をテーマにするのか伝える
「観光」というテーマをいきなり提示するのではなく、なぜ藤枝市の観光について自分たちが扱うのかというテーマの設定理由を最初に生徒と共有しました。
- 人口が減っていく
- 税を払う人が減る
- 公的サービスが整備されなくなる
例:水道料金値上げ、施設取り壊し、学校の修繕後回し
- 観光は市外からお金を得るチャンス
- 観光関係の事業者が潤い、税金を納める
- 市民の生活が守られる、向上する
上記のようなロジックの説明をしたところ、「俺らで藤枝市を豊かにしようぜ!」「お金をゲットする仕組みつくるのおもしろそう!」などポジティブな声が生徒から聞けました。
2 観光客を集める方法を考える上で大切なこと
「観光客を集める」という課題解決活動を行う上で、やりがちな間違いを最初に共有しました。
それは「思いつき暴走族」になってしまうことです。解決策を考えようとすると、いろいろなアイディアを最初に出すことがありますが、これはNGです。
- 藤枝のポテンシャルを無視してる
- お客さんのことを無視してる
- つぎ込んだ時間と労力が無駄になりやすい
商品となる藤枝のことも、ターゲットとなる観光客のことも考えずに行うと、博打打ちになり、当たる可能性もありますが、つぎ込んだ時間と労力が無駄になりやすいです。
つまり、大切なのは下図のように「物知り博士」になることです。コンテンツとなる藤枝のことをとにかくたくさん知ることで、何が商品になり得るのか、発想をもつことができます。
3 お客さんにお金を出してもらう方法6ステップ
藤枝の可能性を見つけたあと、いよいよ「〇〇というお土産を売ろう!」と考えたときに、どうやって売り出していけばいいのかをお伝えしました。
①商品(場所)のことをめっちゃ知る
今回は下図のように自動お掃除ロボットを例にとって説明しました。
自動お掃除ロボットにできることは何か、生徒に考えてもらうと、「自動で掃除をする」という意見が大半ですが、それ以外にもいろいろな機能があります。
例えば、高さ10センチくらいの隙間なら入れる。ちょっとの段差なら越えられる。このようなサブ的な機能に思えてもいいので、いろんな側面から、そのコンテンツができることを想像することが大切です。
②お客さんのことも知る
次に、商品の機能を元に買ってくれるお客さんのことを考えます。
例えば掃除ができないほど忙しい人はロボットを買うかもしれませんし、ソファーが部屋にある人の方が、かがんで掃除する必要が無くなるので、もっと欲しがるかもしれません。
このように、商品の機能、良さを十分に知った上でターゲットのことを考えると、当初考えていなかったターゲットにも売れる可能性が出てきます。
③お客さんがどうHappyになるか仮説を立てる
①、②で商品とお客さんの情報をたくさん洗い出し、2つの関連性が見えてきたら、商品を通してどんなHAPPYをお客さんがGetできるのか、より具体的に考えます。
例えば今回の例なら、「忙しい人が手間を掛けず自分の部屋を掃除できる」ことで「アニメを見ながらリラックスする時間が作れる」というHAPPYを手に入れられます。これが、前段の自動で掃除ができるというだけの訴求だと、購買までつながらないかもしれませんが、後段の説明があることで、自分の生活がどのように良くなるのかイメージしやすくなり、共感してもらえる可能性が上がり、購買につながっていくというわけです。
④お客さんに宣伝する
HAPPYの仮説ができたら、それをターゲットが見る媒体を選んで、宣伝を行います。昨今SNSの活用が注目されていますが、観光商品の場合、意外とポスターを駅や観光地に貼り、購買を促した方が、購買につながりやすいかもしれません。いろんな方法の中からどの伝達手段が一番伝わるのかを考え、選択していくことが大切です。
⑤反応を見て修正発展させる
宣伝の結果、売上につながることもあるでしょうし、まるでダメなこともあると思います。ダメだった場合に大切なのは、「なぜダメだったのか」を分析することです。
たとえば、SNSを使った宣伝の場合、その投稿をどれくらいの人が閲覧し、どれくらいの人がそこにあるリンクをクリックしたのかを分析することが簡単にできます。そういった機能を用いて、投稿は見てもらえたけど、商品購入ページはクリックされていないのか、そもそも投稿をあまり見てもらえていないのかを分析することが大切です。前者と後者では対策としてとる行動が違ってくるのです。
⑥ターゲットがお金を出す
③でよい仮説を立て、④でお客さんに宣伝を届け、お客さんがそこに価値を感じてくれれば、お金を払って商品を買ったり、観光地に訪れたりしてくれます。
このように「観光」を扱う際には、新しい観光名物を作り出す方法よりも、すでにその地域がもっている強みをちゃんと理解し、それを最大限活かしてお客さんに情報を届けていく方法のほうが、時間をかけず、高い効果を発揮できると考えています。
4 藤枝の観光といえば?思いつくものを挙げよう!
生徒に近くの人と相談しながら、ネットの情報などを参照しないで、藤枝の観光といわれて思いつくお土産や場所などを列挙してもらいました。下記はテキストマイニングを用いてその傾向をまとめた図です。
生徒はお土産や食事などモノやサービスよりも、観光地など場所の方を良く知っていることが、よくわかりました。その中でも学区の田中城のことをほとんど生徒が投稿しており、さすが西益津中という印象を受けました。
次回は・・・
観光の商品となる「藤枝」という場所について、その強みは何なのかを分析するところから単元をはじめていきます。生活しているだけだと十分意識しない、観光としての藤枝の魅力にたくさん気づいてもらいたいと思います。
工夫したこと
- オリエンテーションをスライドを用いて探究のミカタスタッフが行った。周りで一緒に考えるようなワークショップを多く取り入れ、興味を沸かせるようにした。
- 商品を紹介してお客さんがお金を払うまでの流れを、具体的な例を用いて説明したことで、イメージが広がった。
よかったこと
- 生徒が活発に周囲の生徒と意見を交換しながら、ワークショップに参加していた。
- 藤枝の観光について、どんなものをイメージしているのか生徒の最初の考えを知ることができた。
参加者のコメント抜粋
授業をうけての感想をいくつか紹介します。
生徒からのコメント
- 意外と自分の住んでいる藤枝でも知らないことがたくさんあることがわかった。これから、藤枝について知っていきたいと思った。いろんな視点で考えられるようになりたいと思った。
- 自分が思っていた以上に藤枝には魅力がたくさんあるんだなーと知ることが出来た。私たちの小さなことから藤枝全体の雰囲気が良くなっていくと思うのでこれからの学習で楽しく魅力が伝えられるようにしていきたいです!
- 藤枝市に人を増やすためにもすぐに決めてしまうのではなくじっくり考えていくことが大事だということがわかりました。
- 藤枝にはサッカーや蓮華寺池、田中城など観光名所になり得る場所は沢山あったけど観光客を呼び込めるような食べ物やお土産が少ないことが分かった。今後の授業では藤枝の魅力などを生かしたことが出来るように頑張りたい。
- 自分が思っていた企画の考え方と実際の企画の考え方が全然違かったので驚きました。また、意外と藤枝のこと知らなくて何となく過ごしているだけだなと感じました。
- 私たちにとっての当たり前が他県の方々にとって新鮮な経験になるのかもしれないと気づいた。将来生かせるような経験になるよう尽力していきたい。そこにある物の良さをいかに伝えられるかが大切なポイントだから土台となる情報収集をできる限り完璧にしたい。
先生からのコメント
- 教員だけでは説明できない、マーケティングの専門的な知識を元にしたオリエンテーションを行ってもらえてとてもよかったです。大人目線でも面白かったです。
- 後日生徒の日記から、「この授業おもしろそう。次が楽しみ」と書いており、普段の授業の様子とは違う姿が見られた子もいて、とてもいい感じです。