【事例紹介】マーケティング視点の課題解決力を育む総合的な学習 最終発表会

2023年5月から11月まで島田市にある島田第一中学校で、総合的な学習の企画・支援を行いました。前期はアイディア出しを、後期はそれを実現に近づけるためにターゲットにインタビューをしたり、試作品の作成をしたりしました。11月13日の最終発表で市の職員の方や市内の事業者に向けてポスターセッション形式でアイディアを発表しました。

目次

今回の実習先

学校名:島田市立島田第一中学校

協力団体:ふじさんグローバルデザインセンター株式会社、KADODEOOIGAWA株式会社

   島田市観光課、博物館課、島田市観光協会

 

実習のテーマ

  • 島一中観光戦略プラン2023を考えよう

  ~蓬莱橋や川越遺跡の来場者数を増やすモノやイベントを企画・試作し提案しよう~

実習の流れ

(前期:5月~7月)

  • 島田市の観光地の良さと課題を調べる。
  • 誰にどんな手立てを打つべきか考える。
  • 友達や市役所、企業の方を相手にアイディアを紹介し、助言をもらって修正する。
  • 9月からのグループ提案に備えて、アイディアを整理する。

(後期:9月~11月)

  • 前期に考えた島田市の観光地の来場者を増やすアイディアをグループで練り直す。
  • グループで考えたことをインタビューやアンケートで検証する。
  • 来場者を増やすイベントやモノを試作する。
  • 最終発表にて、ポスターセッション形式で今までに考えたことを発表する。

最終発表会の様子

発表について

  • 生徒たち48グループが一斉にポスターセッション形式で発表を行いました。

4人グループの2人が前半発表、残りの2人が他班の発表を聞きに行く形。後半は聞き手と話し手が役割を交代しました。

  • ポスターに今まで考えてきた「島田市の観光地に人が増える仕組み、仕掛け」をまとめ、発表しました。
  • どんな思いをもって考えたのか、ターゲットはどんな人物を設定しているのかなど、まるで新規事業立ち上げのコンペのように熱弁をふるっていました。
  • 中には企画したイベントや新商品を紹介するHPを作成し、そのQRコードを来場した保護者に見せ、PRした班もいくつかありました。HPはGoogleサイトを利用し、無料で手軽に作成しました。
  • その他試作品を実際に作成し、視覚的に訴える班もありました。

下の写真はおしまちゃんの急須を実際につくり、紹介してくれた男子生徒です。

評価について

  • 聞き手となる生徒や保護者、講師はシールをもち、発表を聞いた後、「わかりやすい」「ユニーク」「説得力・実現性がある」の3観点のうちどれが優れていたかを判断し、評価シートにシールを貼った。
  • 地元企業や自治体の方が評価者として聞き手にまわり、優れたアイディアを持っていたり、発表の様子が優れていたりするグループを称揚した。また、各団体より特別賞を表彰していただいた。みなさん表彰に副賞をつけてくださり、受賞した生徒たちはお喜びでした。(下の写真は賞状と副賞のクリアファイルや地元銘菓セットなどをもらう表彰式の様子)

よかったこと

  • 最終発表会をクラス選考で勝ち残った代表者のみが発表する「代表発表」スタイルではなく、全グループが一斉に発表を行う「全員発表」スタイルにしたことで、最後まで全員が「自分が発表しなきゃだ!」と他人事ではなく、自分ゴトとして発表会に臨めました。
  • 一斉に全員発表を行ったことで、グループによっては聞き手が集まらないグループもあったが、呼び込みを頑張る生徒も多く、活気のある姿が見られました。
  • 直接インタビューして得た情報を元に、ターゲット設定を説明した班があり、説得力を感じられました。
  • 国語の時間で扱った「問いかけ」を用いて、聞き手を発表の中に引き込みながら話すことができる班がいくつか見られました。クロスカリキュラムの大事さが感じられました。

※クロスカリキュラム=教科横断的な学び。1つの教科だけでなく、複数の教科の中 で資質能力を高めるために、指導内容をリンクさせること。

課題

  • 48グループを体育館に収めることができず、徒歩1分の武道場と2会場にまたがって行ったが、武道場の方に聞き手があまり流れず、武道場の聞き手が不足したこと。

同じような活動をやる際は、48グループ同時ではなく、24グループずつ前後半に分けて実施するコトが望ましいかもしれません。

  • 48グループ同時に行うが、発表+質疑に3分かかるため、90分くらいの活動時間だと、全てをみきることは難しい。そのため、評価が平等に行われない可能性もある。

   一方で、そういった事情を生徒に事前に伝え、試作品を展示したり、ポスターに大き   なイラストを書いたり、呼びこみの言葉を考えたりなど、いかに人を呼び込む「魅せ   方」をするか考えさせるのも、おもしろいと思います。

  • 発表する力が班によって差があるのが見られました。アイディア自体はどの班もおもしろく、よくよく見てみれば「おお!いいぞ!」となるものも多かったのですが、話す力と構成する力をもっと高められるとより良い発表につながりそうです。クロスカリキュラムをもっと有効に使いながら、国語で発表の練習をし、タブレットで録画するなどして、みんなでフィードバックをたくさんできると理想的だと思います。

【話す力】

相手を意識しながら話す力。相手に問いかける言葉を入れる。相手の反応を見ながら、間をとったり、返答を聞いたりする。

【構成する力】

主張と根拠をつなげる力。今回の場合「こうするとお客さんが増えます!」という主張につなげるために、いろいろなアイディアを考えたため、なぜそのアイディアがお客さんの獲得につながるのかを丁寧に考えられるとGOODでした。

今後の生徒の活動につなげる

次回の授業では、最終発表会を含めて、半年間の活動の中で学んできた課題解決の仕方についてまとめます。自分の今までの学びを振り返り、何が良くて、何は改善の余地があるのかを考えます。やりっぱなしにせず、せっかくの活動をどう価値づけるのかをサポートします。

参加者のコメント抜粋

生徒からのコメント

  • 修学旅行の学習を生かして取り組むことができました。京都では、観光地としてどんな取り組みが行われているかを観察したり調べたりしました。その後学校に帰ってから、島田に足りない部分は何かを考え、プランにつなげることができてよかったです。
  • 苦労してつくったHPを保護者の人や企業の人たちに見てもらえ、「これ作ったの?すごいじゃん!」と言われたのが嬉しかったです。今後自分が何かHPつくるときの力がついた気がします。
  • 呼び込みをするのは恥ずかしいところもあったけど、いざやってみてお客さんが来てくれると嬉しかったです。
  • 島田市に住んでいるけど、自分たちの街の観光地についてここまで深く考えたことはなかったです。自分たちの街を知る良い機会になりました。

学校からのコメント

  • 生徒たちが考えたことをポスターにまとめる段階に入ってから、さらに熱が入ったと思います。発表会でも、和気あいあいと発表をして、評価のシールがもらえると「やったー!」と嬉しそうにしているのが印象的でした。最終発表会を全員発表スタイルにして、最後まで当事者意識をもたせたから、この楽しい雰囲気の発表会になったのかなと思います。また、講師のみなさんからの特別賞をもらった人たちの嬉しそうな表情も印象的でした。ご協力ありがとうございました。

講師からのコメント

  • 半年近い時間をかけて準備をしてきた成果として、各グループの発表内容の充実度の高さが感じられました。また、生徒自身が楽しみながら発表をしている姿が見られました。
  • お客さんの気持ちをアンケートを用いて調査して、それを商品に結びつけた班があり、おもしろかったです。中学生でもターゲット意識をもって取り組めるんだなと感じました。
  • 企画したモノ・コトが、それをすることでどうなるのか(どういう経済効果があるか、この客層が増加し来客増に繋がる、等)まで考えられているグループは思いの外少なかったように思います。秀逸なアイディアが多いだけに、惜しい!企業・自治体で実現するには、アイディアだけでなく、利益に結びつけることも大事だと思います。

保護者からのコメント

  • 島田市のことをこのような形で発表しているのがおもしろかった。調べたことをただ発表するのではなく、調べたことをもとに、自分たちはどう考えたのかを発表しているのがよかったです。
  • HPをつくったり、オリジナル急須をつくったり、蓬莱橋の模型をつくったりなど、子どもたちがここまで頑張っているのがすごいなと思いました。
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